とんかつは昼に食べよう。

とんかつは昼に食べよう。



紀元前500年前、中国春秋時代に活躍した軍事思想家、孫氏は兵法書において、こんな言葉を残している。


「彼を知り己を知れば百戦殆うからず(かれをしり おのれをしれば ひゃくせんあやうからず.)」これは「向かう相手の実情と自分の実力を正しく知ることで、負けない戦い方ができる」という意味である。


これは食の世界においても通ずることだろう。日本の独自の料理を楽しむためには正しい食べ方を知っていれば、恥をかくことはない。また、味わい方を知れば、食の美味しさ、奥深さに気づくだろう。


 とんかつとは「単なる豚肉の揚げ物」ではない 

一回目のテーマは「とんかつ」だ。

まず、正しい食べ方をレクチャーする前にとんかつとはいかなる食べ物か、整理しよう。このとんかつなる食べ物は、世界中で類似したものが多く、賢明なる諸君ならば、一度、その姿を見て「豚を揚げたものか」と瞬時に気づくであろう。だが、次の瞬間には「私の国ものとはちょっと違うな。」と思うだろう。

これが日本の「とんかつ」だ

これが日本の「とんかつ」だ



ちなみに、海外の一例を出しておこう。ドイツの薄いカツレツの「Schnitzel」(シュニッツエル)


Schnitzel 薄切りのカツの友はポテト

Schnitzel 薄切りのカツの友はポテト
Hans BraxmeierによるPixabayからの画像



あなたの国の豚を揚げた食べ物とは似て非なるもの、それがとんかつであることはお分かりいただけるだろうか。これは誠に不思議な現象だが、日本人は基本的に豚肉、牛肉に対して薄切りで食べることが極めて多い。すきやき、しゃぶしゃぶ、豚肉の生姜焼き、これらの肉料理は全て薄切りである。かたや、世界を見渡せば、ステーキ、ハンバーグ、鶏の一羽焼き、とにかく豪快である。アルゼンチンでは牛一頭丸ごと焼く、アサードコンクロエという料理もある。(残念ながら、日本では大きなスーパーに行かないと肉の塊は売ってないのだ!)




しかし、こと豚を油で揚げたものに関しては真逆の現象が起きている。日本のとんかつは分厚いが、欧米のものは薄い。これは何を意味するのか、私は食の歴史家ではないので分からないが、興味深い事実であるのは間違いない。


 パン粉に店のこだわり、それはサクサク感 

このとんかつの特徴だが、一般的には肉に小麦粉をつけてその後に、生卵を溶いたものに付けた後、パン粉をつけて油で揚げて作る。一番の特徴は、パン粉であろう。このパン粉にこだわる店も多い。何故ならば、大きく食感が変わるからだ。


そして、日本人をよく観察して欲しい。彼らはこうつぶやいているはずだ。


「サクサクして美味しいね」。


そう、パン粉があることで「サクサク感」が生まれる。(サクサクとは、食べたときの音の表現である。)間違っても「ねっとり絡んで美味いね、とんかつは!」とは言わない。


日本人がとんかつに求めているのは、揚げたてのパン粉のサクサクであることを覚えておいて欲しい。店主に「サクサクしてるね」と言えば、店主は「あんた、分かってるね!(心の声)」と満面の笑みを浮かべるだろう。ただし、とんかつをアレンジしたかつ丼、(とんかつをだし汁に入れ、溶き卵をかけた煮込んだ丼)は衣のトロトロ具合を楽しむようになる。日本人はいろいろ食にうるさいのだ。


 ロースか、ヒレどちらかを選ぶ 

では、いざ店へ行こう。大概、予約はいらない。早い者勝ちだ。人気店ならば行列ができることもある。店へ到着し、年季の入った暖簾をくぐり、手動のドアを開けよう。店員が近づき、カウンター席かテーブル席を確認される。込み具合によってここは変わってくる。カウンターならばシェフの仕事ぶりが見れて、ライブ感覚を楽しみたい。


そして早速、注文だ。
チェーン展開しているとんかつ屋はメニューに食事の写真を載せているが老舗の店では、メニューのプレートに文字だけが載っている。だが、焦る必要は全くない。初心者はここを押さえればいい。


「ロース」と「ヒレ」の2種類あるのでどちらかを選べばいい。ロースは脂身が多く、筋があるのに対し、内臓に近いヒレは脂が少なめなのが主な特徴だ。金額的には若干、ヒレが高い。これは美味しさの問題というより、希少部位であることが関係しているようだ。噛み応えが好きな人は、ロースを、さっとほぐれる身を望むならヒレがおススメだろう。ちなみに店ごとに「〇〇産の豚」という豚の銘柄をアピールしているがこれは上級者向けの楽しみ方である。初心者はロースかヒレどちらかで頭を悩ませばいい。


 とんかつにロマンチックはいらない 

ひとつ、言い忘れたが日本ではとんかつは主に昼に食べる。

夜に食べたからといって悪いものではないが、大事な人との接待や記念日に食べるものではない。レストランのコースメニューにおいても、メインディッシュにはとんかつはラインナップはされてはいない。推測だがとんかつは会話ベースのディナーには向かないのだ。また、初期の恋愛にも向かない。もしも初めてのデートで食事をする場合、「とんかつ行こうか!」とはならない。「この人、どこで育ったらこうなるのか?」と首を傾げられるだけだ。皆さんも気を付けてほしい。もちろん、ファミリー、気の合う仲間、一人で行くのはありだろう。むしろ夜、とんかつを食べるようなカップルは親密な仲とも言えるだろう。


「夜、とんかつ行こうか?」と基本言わない

「夜、とんかつ行こうか?」と基本言わない
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さて、いざ、とんかつを注文したら出来上がるのを待つばかりと思ったら大間違いだ。油断してはならない。ある見慣れぬ小鉢と木の棒とゴマ(黒い粒々)があなたの下にやってくるだろう。小鉢はすり鉢と言われ、ここにゴマを入れ、木の棒で擦ってさらに細かくする。そしてソースを中に入れることで風味を増し、とんかつを食べる態勢を整えるのだ。最近の店ではこのパターンが多いので焦らずにやってほしい。




そして揚げたばかりのとんかつがやってきた。とんかつのお供には、キャベツが添えられる。これはほぼ100%間違いないだろう。油の摂取を防ぎ、胃を整えてくれる効果があるためだ。店によってお替りが出来ることを店員が説明してくれるだろう。


さて、ここからが難関だ。とんかつのどこから食べるのか?ロースの場合、特に注意が必要だ。端からキレイに食べるべきか?それとも真ん中か?私は、ファースト一噛みは、肉厚の真ん中をおすすめしたい。最初の一口こそが舌にガツンと来ることを考えれば、そうだろう。事実、店によっては真ん中がひっくりかえって提供されることがある。「とんかつの分厚さ」と、「ここから食べてください」という店主のアピールと解釈すべきだろう。


まずは、そのまま味わうか、軽く塩をつけるか、どちらかで味わって欲しい。肉本来の旨さを体感するためだ。いきなりソースをつけてしまうと、ソースの味が強すぎるのだ。それでは豚も本望ではないだろう。


しかし、ソースあってのとんかつ。二切れ目以降は、ソースのちょろっとつけて味わって欲しい。で、つぶやくのだ。


「サクサクしてるね」


ここを押さえれば、あとは大丈夫だ。とんかつ、ごはん、みそ汁、時々キャベツのリズムで食べれば極上のとんかつタイムとなるだろう。慣れてくれば、別メニューのエビフライ、牡蠣フライにも挑戦して欲しい。


さあ、あなたもとんかつデビューしよう。


foodots.おすすめの東京で味わえるとんかつの名店

新宿/とんかつひなた
https://www.foodots.jp/tonkatsu-hinata/



銀座/銀座かつかみ
https://www.foodots.jp/ginza-katsukami/



淡路町/とんかつ万平